お食い初めに込められた願い

お食い初め、ご存知ですか?お子さんがいる家庭は馴染みがあるかと思いますが、機会がないとなかなかお食い初めについて考えることはないのではないでしょうか。

英語で『Beginning of eating』

食にまつわるブログに是非載せたいと、詳しく調べてみましたので是非お読みください。

難しいことは…という方は、次の投稿で実際に栄縁メンバーが行ったお食い初めの記事がありますので、そちらを参考にしてくださいね☆

お食い初め~お祝い膳で健やかな成長と長寿を願う~

お食い初めとは、

子どもの健やかな成長を願う一生に一度の大切な行事です。

お祝い膳を整え、家族のうち年長者が子どもに食べさせる真似をするという儀式を行います。子どもが家族に仲間入りしたことを祝福するとともに、

一生食べ物に困らないように

と子どもの幸せを願います。

お食い初めが行われるのは、生後100日目。そのため百日祝い(ももかいわい)と呼ばれることもあります。

長命になること、食事を急ぐ癖を防ぐことを表す「食いのばす」という言葉の縁起を担いで、生後100日以降にお食い初めを行う地域もあります。

お食い初めの起源

日本でのお食い初めの起源を調べてみると、平安時代に宮中で行われていたお食い初めの元となる行事があり、鎌倉時代には武士階級に、その後庶民に広まったようです。その行事とは、五十日(いか)の祝い、百日(ももか)の祝い、魚味始・真魚始(まなはじめ)、歯固めが挙げられます。

五十日の祝いは、生まれて五十日の赤子の口に、父や外祖父などが餅をふくませて祝う儀式でした。その五十日後に行う百日の祝いでは、生後百日目にお祝いの餅をつき、子どもに食べさせました。

魚味始・真魚始は生後二十ヶ月頃に魚などの動物性食品を食べさせる儀式です。

歯固めは子どもだけでなく、大人も正月三が日に行っていました。大根、瓜、押鮎、煮塩鮎、猪または雉の肉、鹿または鴨の肉を用いた料理を食べて長寿を願いました。

これらの行事が日本の風土に合わせて融合し、現在のお食い初めが形成されたようです。

お食い初めのような儀式は現在でも中国の百歳祝や百日宴をはじめとし、世界中でみられます。

現在の皇室では、生後120日前後に「箸初めの儀」という一般の家庭で行われるお食い初めにあたる儀式が行われるようです。

お食い初めに必要なもの

お食い初めの儀式に必要なものは祝い膳新調した子ども用の食器と箸です。

地域や家庭によって、歯固め石やもちを用意することもあります。

☆お祝い膳

お食い初めに欠かせないお祝い膳は、赤飯、すまし汁、尾頭付きの鯛、煮物、歯固め石です。縁起の良い食材を使った料理を新しく用意した食器に盛り付けます。お食い初め用の伝統的なお祝い膳を提供する飲食店もあります。

☆新しい食器と箸

お食い初めに使う食器は漆器です。しかし、現在は離乳食を食べる際も使えるようにプラスチック製の食器を用意することもあります。箸は祝い箸という両端が細くなったものを用意します。

☆歯固め石

歯固め石はお祝い膳の隅に置かれる小石です。歯が強くなるといういわれがあります。お食い初めを行う生後100日頃は乳歯が生え始める時期なので、それに合わせて石のように丈夫な歯が生えることを願います。

お食い初めのお祝い膳

お食い初めに欠かせないお祝い膳。縁起の良い食材を使ったごちそうが並べられます。日本の行事食らしい一汁三菜から一汁五菜の献立で用意される場合が多いです。

☆ご飯

ハレの日らしく赤飯を食べることが一般的です。他には白ご飯、お粥、小豆飯、寿司を主食として用意する家庭もあります。日本では昔から「赤」という色に特別な意味がありました。邪気を払う、争いを避けるといった力を持つ赤色にあやかり、お祝いの席では赤飯を食べるようになりました。

☆お吸い物

味噌汁やすまし汁が添えられます。吸い物を添えるのは、吸う力が強くなって母乳をたくさん飲めるよう願いが込められるためです。汁の実は将来良縁に恵まれるように、縁起の良い蛤と三つ葉が選ばれることが多いです。良い人間関係や願いを結べるようにと結んだ三つ葉が特に縁起が良いとされています。

☆尾頭付きの魚

めでたい魚の代表格として挙げられる鯛が出されることが多いです。頭から尾まで付いている魚は、1つの物事を最初から最後までまっとうするという意味が込められているため縁起物として扱われます。また、どこも欠けていない丸ごと1匹という完全な姿から神様に供えるためにふさわしいものと認識され、ハレの日の定番食材になりました。

鯛が好まれる理由は赤い体色と長い寿命です。赤飯と同様に赤い色には邪気を払う力があるとされているため、鮮やかな鯛の赤色が縁起の良さを演出します。鯛の寿命は他の魚より長いので、長寿を願って食べられます。

☆煮物

野菜や山菜、肉などのさまざまな食材を同じ鍋で煮て作ることから、家族が仲良く末永く繁栄するようにと願いを込めて食べられます。子どもの成長を良い環境で見守るために、家庭円満を祈りながら煮物を食べるようにしましょう。一つひとつの食材に子どもの健やかな成長への願いを込めて準備するのもおすすめです。

☆その他

他には香の物などが添えられます。近年のお食い初めでは、子どもが喜ぶような料理がお祝い膳を彩ります。例えば、ハンバーグやプリンなどです。

お食い初めは儀式を形式通りに行うことが目的ではありません。

子どもが安全に育ってくれるように願いを込めることがお食い初めの本質です。

子どもの成長を喜んで美味しく祝えるよう、各ご家庭でお祝い膳の内容を工夫するのもお食い初めの楽しみ方の1つです。

お食い初めの儀式

お食い初めの儀式はお祝い膳を食べさせる真似をするのがメインです。お祝い膳を食べさせるのは誰か、食べさせる順番のしきたりや歯固めの儀式を行う方法について説明します。

☑お祝い膳を食べさせる真似をする

子どもの長寿を願って、親族内の年長者がお祝い膳を食べさせる真似をします。古くは親族内の年長者の役目でしたが、現在では祖父母や両親がお祝い膳を子どもの口元へ運ぶ場合が増えています。

☑お祝い膳を食べさせる順番

お食い初めの儀式では、食べさせる順番が決まっています。地域によって多少の違いはありますが、一般的な方法を紹介します。ご飯、お吸い物、ご飯、お魚、ご飯、煮物、ご飯、お吸い物…という順番を3セット繰り返します。ご飯の間にお祝い膳の各料理を挟んでひと通り食べるのが1セットです。

☑歯固めの儀式

歯固めの儀式は、3セットの繰り返しを終えた後に行います。箸先を歯固め石に数回当てて、その箸先を子どもの歯茎に数回当てましょう。歯固め石を子どもの歯茎に直接当てたり噛ませたりする地域もありますが、後飲の危険性が高いので箸を介して歯固めの儀式を行ってください。

まとめ

お食い初めは生後100日を過ぎた子どもの健やかな成長を願うために行われる一生に一度の儀式です。

お祝い膳を用意し、お食い初めの儀式を行い、歯固めの儀式をするという伝統的な通過儀礼は、古くからのしきたりを守りながらも時代に合わせて変化しています。

各ご家庭に合ったお食い初めを楽しみながら準備してみてくださいね♪

参考文献

  • 富山県における初誕生までの儀礼と食べ物 ―昭和前期と平成期を比較してー 掲載誌:富山短期大学紀要第 52 巻(2017.3)、著者:宮田佳奈,深井康子
  • 第10 回 食い初め 掲載誌:ペリネイタルケア27巻7号、著者:松岡知子
  • 少子高齢・過疎化における通過儀礼の変遷 ―「日本で最も美しい村」山形県最上郡大蔵村を事例として 掲載誌:山形大学紀要(人文科学)第17巻第3号別刷、著者:尤銘煌  苗択遠
  • 平安朝の食文化考 土佐日記の食について 掲載誌:帯広大谷短期大学紀要37巻、著者:佐藤茂美, 池添博彦
  • 日本の古典文学から読む子ども史 掲載誌:大阪大谷大学教育福祉学会 教育福祉研究、著者:原田知佳
  • 中国の日常食と行事食の意識について 掲載誌:青山学院女子短期大学紀要、著者:橋本慶子

著者プロフィール

broccolin

好きな食べ物はブロッコリーで、つぶつぶより茎が好き。管理栄養士としての目標は「病気になる人を減らし、健康な人を増す」。

管理栄養士免許を取得後、大学院へ進学。現在は循環器、特に高血圧をメインとした生活習慣病予防の研究を行っている。

研究の傍ら、ライターとして食関連の記事を執筆中。世界中の人々のヘルスリテラシー向上を目指し、根拠に基づいた情報を分かりやすく伝える。TOKODORI:https://tokodori.com

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