味覚と食育
先日、栄縁のInstagramで味覚について投稿しました。
今回はその味覚について食育の観点からもう少し掘り下げてお話してみたいと思います。
味覚とは
舌などで物の味を感じ知る感覚。 甘い・苦い・辛い・酸っぱいなどの味の感覚。
味覚にはその食べ物が有益なものか、有害なものかを知らせる役割があります
甘味、塩味、旨味は生きるために必要な栄養素であると知らせるため、自然にその食べ物を好むようになると言われています。
一方で苦味、酸味はカラダに良くないものを知らせます。
つまり
味覚は生きていくために必要な能力なのです。
子どもが甘いおやつを好み、苦いピーマンなどの野菜や酢の物が苦手な子どもが多いのも納得😄
味覚を育むことは、子ども達の脳の発達や感性を磨くことにも繋がっています。
脳の発達で小脳は8歳頃、大脳は12歳頃で完成すると言われており、その頃までにどれだけたくさんの刺激を与えられたかが脳の発達にとってとても重要だと言われています。
フランスの味覚研究所創設者であるジャック・ピュイゼは醸造学および味覚の権威としてその学識の深さから世界的に知られ、1974年から食育に携わり、多くの成果をあげています。
ピュイゼの味覚教育は
「五感を使って味わうことを学ぶ教育」であり、決して「味を教える教育」ではありません。
また「自分が味わったもの、感じたこと、それを表現するのは自分しかいない。他人にはできない。だから自分で味わい、感じたことを自由に表現するのだ」ということを理念にあげています。
そして
食べることは喜び、楽しみの行為であり、五感全てを使う唯一の行為である。と
食べ物と向き合って様々な味を感じることで脳が刺激されると本来備わっている五感が磨かれます。
そして感じたことを言葉で表現することによって語彙力の発達を促すと考えられています。
言葉は自分の経験の中から出てくるものであり、また経験を思い起こすことで語彙を増やし表現力を伸ばします✨
食育として私たち大人が子ども達にできること
「味覚は子どもの脳の発達や感性を磨くことに繋がっている」ということを踏まえて
私たち大人は子どもにどんな風な働きかけができるのか考えてみました。
1、たくさんの味を経験させてあげる
これはただ単に様々なものを食べさせると言うのではなく、自然の素材を活かした食べ物を選ぶ事が大切です。
味付けをしていない素材そのものの甘味や旨味、苦味、えぐみなど自然界の繊細で淡い味を経験することで様々な味を見分けられるようになるのです。
2、言葉で表現してみる
どんな味?どんな形?どんな色?などの質問を投げかけることで子どもは自分の記憶に問いかけ、その蓄積の中から言葉を導き出します。
この時、「昨日のバナナより甘いね」や「お庭に咲いている黄色い花と同じくらいの黄色」「僕の手のひらと同じくらいの大きさ」など具体的な表現ができると良いです。
すぐには上手く表現できないでしょうからはじめは大人が一緒に考えてあげると良いと思います。
3、他者との違いを認め合う
自分が味わったもの、感じたものは自分にしか表現できません。自分が感じたものを他者と共有することで自分と他者は感じ方が違うという事を知り、互いの違いを認め合う他者理解につながります。
「こんな味がするね」「私はこう感じたよ」と互いに話をするだけで、コミュニケーション力と表現力が育まれます。
ここで大切なのは、大人は決して答えを押し付けず、ひとりひとりが違うということを子どもにメッセージとして伝えることも必要だと筆者は考えています。
4、家族で食卓を囲んでたくさんの体験を共有
子どもは黙っていても甘いものは食べますが、酸っぱいものや苦いものは食べたがりません。どうせ食べないからと食卓に出すのをやめるのではなく、積極的に大人が働きかけて様々な味の体験をさせてあげて欲しいです。
家族で同じものを食べて同じ時間を共有する。その食卓での雰囲気や味の記憶が子どもの心や生活を豊かにしてくれると思います。
ちなみに好き嫌いが少ない人ほど子どもころから豊富な食体験をしていると言われます。
特に小さな子どもは何を食べるか自分自身では選べないので大人が知識を持って選び様々な味の体験をさせてあげると良いと思います。
食育は特別な事をしようと構えなくても普段の食事の中でどんな風に食べ物とそして子どもと向き合うかが大切なのではないでしょうか☺️
子どもと一緒に「食べ物」や「食べること」について話をするだけで十分食育と言えます。是非、ご家庭で子ども達と一緒に食卓を囲む素敵な時間を楽しんでみてください✨
参考資料
・日本調理科学会誌Vol.48 No.6 435〜438 ・KOKOCARA https://kokocara.pal-system.co.jp/keyword/sense-of-taste/