委託給食会社で働く栄養士
はじめに
私は小学生のころから料理が好きで、いつからか食に関する職業に就きたいと思っていました。
就職活動時には保育園の栄養士を希望していましたが、まずは栄養士としての経験と知識を得た方がいいのではないかと担任に言われたことをきっかけに、委託給食会社への入社を決めました。
特別養護老人ホーム
初めての職場は家から近い特別養護老人ホーム。同じ敷地内にケアハウスもあり、昼食はデイサービスも含めると150食を提供していました。
私の仕事は栄養士業務というよりは、盛り付けや洗浄・配膳など厨房内での流れを一通り覚えて、まずは現場を回せるようになることが任務でした。
朝5時半~19時半の8時間のシフト制で、人員不足の時はたまに“通し”といって14時間勤務の時もありました。(残業代もしっかり出て、若かったのでこなせましたが…)
1年目は何事も挑戦し、ステップアップしていくことが特に大事でした。
備品や調味料などの簡単な発注から始まり、2年目からは自分で献立作成と食材の発注を行いました。献立を作る上でも、後々シフトを立てる上でも、厨房内の流れを理解している事はとても重要でした。
なかなか栄養士業務をやらせてくれないとふてくされていた時もありましたが、今思えば厨房で調理師さん達と長い時間コミュニケーションをとることは、栄養士にとって一番大切なことかもしれません。基礎的な事はこの3年間で経験することができました。
デイサービスとケアハウス
次の職場は60名の入居者とデイサービスの30名の利用者がいるケアハウスでした。
こちらでは“出向”という、委託会社に在籍しながら施設栄養士として勤務しており、給料は施設からいただいていました。
施設栄養士として食事の感想を直に入居者や利用者から聞いたり、リクエストがあれば次回の献立に組み込んだり、とても近くでお話しすることができました。
ただ、施設内のイベントや会議への参加はもちろん、委託会社側の会議や研修も参加するので、厨房業務と献立作成・発注、各会議の出席で、毎日慌ただしかったです。
ですが後輩栄養士の手を借りながら、徐々に仕事を任せていき人材育成ができた事も、自分の成長に繋がりました。
ここでの2年間はやっと
栄養士として働いている実感があり、充実
していました。
新規オープンの特別養護老人ホーム
3か所目の配属先は新規オープンさせた特別養護老人ホームです。
ここではとても貴重な経験をさせていただきました。まずは一緒に厨房で働くスタッフの採用面接から調理器具や食器選びなど、何もかも決まっていない事を自分の経験を基に上司と相談しながら決めていく作業から始まりました。
オープン当日は昼食から提供開始で入居者は3人、毎日だんだん増やしていきながら100人の満床になるまで、提供の仕方を試行錯誤していきました。
当時は珍しかったソフト食(ペースト状にしたものを更に固めて食べやすくしたもの)の提供に向けて、試作を重ねて他のスタッフに指導できるように日々勉強したこともありました。
プレッシャーや激務に押しつぶされそうな時もありましたが、人間関係が上手く築けていたので、相談できて頼れる仲間にかなり助けられました。
貴重な経験と出会いに感謝の1年でした。
障害者施設
次に配属されたのは自社で新しく委託を任された障害者施設です。
5時から21時のシフト制で200食、食事内容も使う食器も細かく決まりがある利用者も多かったので、とにかく覚えることが多かったです。
ここで悩まされたのが、施設側の管理栄養士と程よい距離感で上手く関係を築くことでした。
最初のうちから難しい提案や予算案を結構言われたので…なかなか厳しかったです。会社としてはまず採算をとらなくてはいけない。しかし施設側の要望をすべて聞いていたのでは、採算はとれなくなってしまう。そのバランスを考えながら、厨房スタッフの負担が大きくならないように日々奮闘していました。
早番・遅番
委託給食といえば、朝・昼・晩御飯の提供が必要なので、早番・遅番があります。
それぞれ働いた時の1日スケジュールを下記に示しましたので、参考にしてくださいね。
老人ホーム 栄養士の1日のスケジュール
8:30 出勤
8:30~9:00 朝礼、お昼の食札確認(デイサービス利用者・職員の人数確認)
9:00~10:30 検品・検収、翌日の仕込み
10:30~11:30 盛り付け補助、配膳前確認
11:30~12:30 ラウンド(入居者の食事量チェック)
12:30~13:30 休憩
13:30~14:30 事務作業(献立作成・発注)
14:30~15:00 デイサービスおやつ準備
15:00~17:00 事務作業(会議などもあり)
17:00~17:30 配膳前確認
17:30 退勤
老人ホーム(早番)栄養士の1日のスケジュール
5:30 出勤
5:30~7:00 ひたすら盛り付け
7:00~7:30 配膳前確認・配膳
7:30~8:00 休憩
8:00~9:30 朝礼・洗浄
9:30~10:00 10時の水分準備
10:00~11:30 検品・検収、事務作業
11:30~12:00 配膳前確認
12:00~13:00 休憩
13:00~14:00 洗浄
14:00~14:30 おやつ準備
14:30 退勤
障害者施設(遅番)栄養士の1日のスケジュール
12:00 出勤
12:00~13:30 翌日仕込み
13:30~15:30 事務作業(献立作成・発注)
15:30~17:30 盛り付け、配膳前確認
17:30~18:00 配膳
18:00~19:00 休憩
19:00~21:00 翌日の食札確認・洗浄
21:00 退勤
もちろん例外も多いですが、だいたい私はこのようなスケジュールで働いていました。
結婚して子供ができてからの早番・遅番はさすがに厳しいと思い、最終的に寿退社という理由で退職しました。
委託会社に勤めた期間を振り返って…
短大を卒業してから7年間委託会社で勤めて感じる良い点は、
福祉施設・学校・保育園・病院など数多くの配属先がある
ということです。
“栄養士”として長く働きたいのであれば、多くの知識と経験が必要です。こちらから提案したり積極的に意見を言って参加できると、信頼に繋がるからです。衛生管理や食材管理もしっかりとしたマニュアルがありますので、知識の習得も実践もできます。
何かあれば上司や先輩が助けてくれる縦の繋がりがあること、そして同期や社員同士助け合える、横の繋がりがあることも魅力です。例えば突然の体調不良で当日休まなければならない時、すぐにサポートが来てくれます。力強い味方がいつでもいる安心感があると、働きやすいですよね。
勤務地についても、通勤距離や手段などある程度は希望を聞いてもらえるでしょう。働いてみて、どうしても嫌なことがあれば、異動を申し出ることも可能です。逆に、とっても居心地のいい施設でも、上から異動を言い渡されればよっぽどの理由がない限り、異動することになりますが…。
朝から晩まで日の当たらない場所で働く日々がとてもストレスに感じることが何度もありました。それでも辞めなかった理由は、
上司やパートさん、利用者様まで、毎日感謝してくれた
からです。
4か所配属されて、何百人と関わることが出来て、経験と知識と得られたものの多さは、委託会社ならではだと思います。
プロフィール
ASAKO WATANUKI
現在、千葉県で子育てのため専業主婦。米農家に嫁ぎ、繁忙期は手伝いをしています。栄養士時代に身についた集団調理がとても役に立っています。今は退職しましたが、子育てが落ち着いたらまた栄養士として勤務して、ある程度歳をとったら早番勤務のパートでまた厨房で働きたいなと思っています。
さいごに(編集部より)
栄養士さんの中では、委託給食会社が初めての就職先となる方が多いのではないでしょうか。何といっても様々な場所で働くことができ、経験値を積めることはメリットだと感じました。
就職先を迷っている(絶対に病院が良い!など決まっていない)、若いうちにたくさんの経験をしたいなどの考えの方には、特に委託給食会社は良い選択肢になりそうです。
委託会社や働く場所によって一概には言えないかと思いますが、ASAKOさんの場合をお伝えしました!私の委託の働き方はこうだった!など違った視点からの情報がある方は是非教えてくださいね。たくさんの方に栄養士の働く現場を伝えていきたいと思っています。