メーカーに就職した管理栄養士の働き方

メーカーに就職した管理栄養士が取り組んできた幅広い仕事

この記事では、メーカーに就職し、研究開発部食品開発チームで16年間働いた私の仕事内容をお伝えしたいと思います。

食品の研究開発部の仕事内容は、世の中にどのようなニーズがあるかを考え、ターゲットや商品の剤型を決めます。そして素材選定、配合割合を何度も検討し、安全性・安定性を試験して、工場での製造ラインでテストをし、商品設計を完成させます。

その商品設計の際にも、栄養学の知識をたくさん活かしてきました。

社内での会議はスムーズに進まないことも多く、泣きながら帰った日もあります。でも、それらを乗り越えて初回生産品を手にしたときには、達成感や「開発者冥利」につきる思いでいっぱいでした。

私が研究開発部の中でも、他の研究員とは違う‘’ポジション‘’を確立できて面白い仕事ができたのは「管理栄養士」の資格があったからでした。

これまで社内で管理栄養士として活躍する先輩がいなかったので、すべて自分で作っていきました。

「この人に聞けばいい」と頼りする人がいないわけですが、前例やマニュアルにとらわれることなく、自分のアイデアや考えや表現を自分でカタチにしていける面白さがありました。

この記事では、管理栄養士として行ってきた仕事内容の中から3つを紹介し、その仕事をする上で必要だと思ったチカラや普段から心掛けていたことを述べてみたいと思います。

紙面広告で栄養コラムの連載

入社3年目。きっかけは、参加していた社内のバスケットボールサークルの先輩に声をかけてもらったことでした。

「ねぇ、管理栄養士の資格を持っているんだよね?今度うちの営業部でサプリメントを販売する事業をすることになったんだけど、紙面広告に毎月栄養コラムを書いてもらえないかな?」

書くことが大好きな私は

「やりたいです。上司にそのお話を通してもらえますか?」

とすぐに伝えました。

管理栄養士、として着目してもらえたことが嬉しかったのです。そして、他の研究員にはできない仕事領域を開拓できそうで、25歳の私はとてもワクワクしました。

栄養コラム執筆の仕事は、例えば30~40代女性をターゲットとしてカルシウムを補給するサプリメントを売りたいと要望があった広告に、何を紙面で伝えたら良いかを考えました。骨密度の話、カルシウムと食事、手軽にカルシウムを補給できるヒントや工夫などを盛り込んだ栄養コラムを全てオリジナルで書きました。

ここで大切なことは「文章力」だけではなく、「いかに40代の女性の身になって、カルシウムと食について興味を持ってもらえるのかを考える」ということです。

そのために、普段から色々な年代・性別の人と話し、どんな食生活を送り、どんなことに困っているのかをリアルに感じることを心掛けてきました。そこに、管理栄養士としての正しい栄養学の知識をプラスして、栄養コラムを書くようにしてきました。

そして、この仕事から学んだことは

「人とのつながりが、仕事のご縁につながる」

ということです。

また、周囲に「管理栄養士であることを知ってもらう」ことが大切です。

私は普段から、社内で色々な人と仕事をする際には、自分が管理栄養士であることも話してきました。この栄養コラムの仕事は「管理栄養士はメーカーで販売促進の仕事もできる」と、社内の人に知ってもらえるきっかけとなり、この後、管理栄養士としての仕事の幅がどんどん広がっていきました。

テレビ番組に生出演

入社8年目~12年目。テレビ番組の生放送に3回出演しました。

通販ショッピングの時間帯に自社商品を説明する仕事内容でした。誰が出演するのかを検討される中で、

「普通の社員が出演するより、国家資格である管理栄養士の社員が出演するのが好ましいのでは」

ということで、私がこの仕事をできることになりました。

生放送の緊張する空気の中で、決められた時間内に商品や栄養について話をするために大切なことは、普段から一般の人にわかりやすい言葉で栄養について話すことを心掛けること。そして、普段の会議やプレゼンテーションの時間を通して、人の顔を見て大きな声で堂々と話をすることに慣れておくことです。

キャスターやディレクターとの打ち合わせは短時間。初対面の人とすぐに打ち解けるコミュニケーション能力も重要だと感じました。

海を越えてアメリカへ

入社10年目。所属する研究開発部がアメリカの大学と共同研究をした際には、管理栄養士としてアメリカへ出張する機会も得ました。先方はアメリカの栄養士がメンバーに入っているので、このプロジェクトには日本の管理栄養士である私がメンバーに入りました。

アメリカ出張前の準備は時間的に大変でしたが、それでも

「未知の仕事を切り開くワクワク」の方が勝っていました。

グローバル化の時代です。

私は入社した頃は自分が海外出張に行くとは思ってもいませんでした。これからの時代、海外の人と仕事をすることも増えるのではと思います。仕事を円滑に進めるためにも、「栄養学をブラッシュアップする」とともに「英語力の向上」も意識しておくといいのではと思いました。

まとめ

資格や知識はただ持っているだけでは活かすことは難しいので、「管理栄養士」であることを周りに伝え、ひとつひとつの仕事を大切にしてきた結果、

「管理栄養士は、他のメンバーにはできない仕事ができる」

ことをわかってもらえるようになりました。

そして、販売促進やメディアでの仕事や海外出張に至るまで、幅広い仕事をすることができました。

そのためには、普段の生活での心がけや話すチカラを鍛えること、未知を楽しめる気持ちやコミュニケーション能力も大切であることを述べてきました。

管理栄養士の可能性は無限大にあります。

管理栄養士を目指す皆さんが、これからの管理栄養士の道を一緒に作ってくださることを願っています。

プロフィール

石原恵子

大学卒業後、16年間メーカーにて食品の研究開発に従事。商品開発、学会での研究発表の他、管理栄養士としてレシピ開発、栄養コラム執筆、テレビ出演、食育講演会の講師も。食育に関する論文、管理栄養士をめざしたきっかけやキャリアを執筆した著書あり。現在は、栄養や食に関する記事を執筆しています。(記事執筆サイト)管理栄養士等の資格を持つライターが記事を執筆している「TOKODORI (トコドリ)」https://tokodori.com/

おわりに(編集部より)

メーカーで働く管理栄養士さんといっても、ピンとこない方もいるかもしれませんね。食品やヘルスケア部門などの企業といった方が馴染みあるかもしれません。メーカーさんの中でも、今は管理栄養士の力が求められる時代となってきました。

食は人々の身体を支えるとても重要なもの。食のプロである管理栄養士を雇うことで、企業側は積極的に食育や健康増進につながる活動をし、食に関わるニーズに合わせていきたいと考えてくださっているところが多くあります。

まだまだこの方面へ就職する栄養士・管理栄養士が多いとは言えませんが、だからこそ私達栄養士・管理栄養士の力を認めていただき、積極的に採用してもらい、食を通して人々を幸せにできるお手伝いができる世界が益々広がることを期待します☆彡

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