千葉県の郷土料理について
はじめに
栄縁を通し全国の管理栄養士さんと知り合うなかで、各地域独特の料理をもっと知ってみたい!と思いました。
地域独特の食べ方や、行事食、郷土料理など、その地域で暮らさないと知らないことがたくさんあります。
そこで、全国の栄養士・管理栄養士さんにお願いし、それぞれの地域の郷土料理や行事食などを調べ、伝えていただく記事を不定期にお願いしていこうと思います。
まずは千葉県です☆
千葉県といえば…?
千葉県といえば、何を思い浮かべるでしょうか?
私は落花生が大大大好きなので、落花生を思い浮かべます。あとは、ディズニーランドは東京じゃなく千葉だよという情報程度(笑)
そこで生まれも育ちも千葉県の栄養士WATAさんにお話しをお聞きしました。
住んでいる場所は北西部で、都心にも近く、行けば山も海もあり、南部に行けば旅行気分を味わえる観光地がたくさんあるとのこと。温暖な気候と恵まれた大地が広がっている千葉県では、さまざまな野菜や魚介類が年間を通して生産されていますよーと教えてくださいました。
さらに米農家に嫁いだ栄養士さんなので、美味しいお米にも囲まれ、食の豊かさを実感しているとのことです。
千葉県の郷土料理
なめろう
千葉県南部の漁師めしとして古くから伝わるなめろうは、
「なめるほど美味しい」や「(粘りが強く)なめないと食べられない」
という由来の食べ物。
一般的にはアジで作られますが、季節によってイワシ・サンマ・トビウオ・イカも用いられます。なので旬の魚でいつでも楽しむことができる調理法ですとのこと。
味噌で味付けされる理由も、漁師さんが船で調理する際に、流れやすい醤油ではなく、扱いやすい味噌が使われたようです。
なめろうを焼けば『さんが焼き』、茹でれば『つみれ』になり、いろんな楽しみ方が出来ます。
WATAさんはスーパーで新鮮なアジが売っていれば店内で刺身にさばいてもらって、あとは自宅でたたき、なめろうを作ることもよくあり、魚が苦手なお子様でも味噌風味であれば食べやすく、炒めてそぼろ状にしても美味しいおかずになりますよーとのこと。
「青魚を食べよう!」といろんなところで耳にし、青魚といえば焼き魚か刺身くらいしか調理法が思い浮かばないですが、いろんな薬味や味付けを試したなめろうをベースに、焼いたり茹でたりして食べれば、美味しく青魚を食べられる機会ももっと増えそうだと感じました。
茹で落花生
『落ちた花から生まれる』その名の通り、花期後に子房の先が地中に潜って生育する落花生。
ピーナッツの方が馴染みがあるでしょうか。八街市(やちまたし)が産地として有名ですが、実はスーパーに並んでいる落花生の9割は外国産(中国が多い)です。残りの1割だけが国内産、貴重な落花生を生産してくれています。
落花生といえば乾燥させたり炒ってあるものがポピュラーですが、千葉県内の道の駅・直売所では、ピーナッツバターやピーナッツ味噌、ピーナッツソフトなどいろんな加工品が楽しめるとのこと(是非行きたい!そして味見したい♪)
WATAさんのお母さんが昔作ったお弁当にはピーナッツ味噌が入っていて、あの甘さをご飯のお供に食べていました!とおっしゃっていました。
WATAさんおすすめは“おおまさり”という品種の『茹で落花生』
ここ10年くらいで定着した落花生であり、粒がとても大きいのが特徴。
そして皮が薄くてみずみずしく柔らかい、甘くて美味しいとのこと。田舎の家では秋になると、皆さんどこからか入手した茹で落花生でおもてなししてくれ、WATAさんの家でも、隣の家の知り合いの農家さんから毎年頂くようです。
今はインターネットでも買えるようなので、是非大粒な落花生を試したいと思いました!
太巻き寿司
米作りが盛んな地域で、古くから祭りや行事で振舞われていた『太巻き寿司』とは、切った時の断面が花や模様になっていて、その華やかさを楽しむもの。
老人ホームなどの施設のイベントでも提供されることが多いのですが、メインとして華やかさが出るにもかかわらず、コストがあまりかからないのが有難いメニューとのこと。この視点は、栄養士さんならではですね!!
ただコストがかからない分、味にメリハリがないのでアクセントとして漬物を使うとよいとのこと。模様の葉や茎になる緑色をほうれん草⇒野沢菜とするだけで味・食感共に良くなります。
また、子どもには混ぜご飯の素を使って色を付けるのもお勧めだが、少しムラがある混ぜ方のほうが断面がきれいになります!とも教えてくれました。
「模様の種類もたくさんありますが、バラや桃の花は比較的簡単で、手順とコツを掴んで事前準備をしっかりやれば、後は同じことの繰り返しなので短時間で大量に作ることができます。」とのこと。
絶対難しい!!と思っていたので、驚きでした。子供のお弁当に入れたら喜ぶこと間違いなしですね😊
性学もち
今回郷土料理について調べてもらったところ、WATAさんも一度も聞いたことがない郷土料理があったとのこと。それが『性学もち(せいがくもち)』。つき抜きもち・棒もち・しんこもちとも呼ばれます。
食の専門家であり農家の嫁として知らなかったとは恥ずかしいので調べます!!とのことで、調べてくださいました。
性学とは学問・考え方で、高額だったもち米を食べられない人にも、お餅を食べさせたいという思いで、うるち米(普段食べているお米)から作る『性学もち』が考案されたようです。
もち米で作るお餅は粘り気が強いですが、うるち米から作るお餅は粘り気が少なく、歯切れがいい事が特徴です。なのでお子様やお年寄りでも安心して食べることができるとのこと。
WATAさんは老人ホーム栄養士として働いていましたが、イベントで餅つきをすることもあったそう。しかし、高齢者にお餅は危険を伴うので、つきたてのその餅は職員用に、入居者には別に用意した介護食で高齢者でも食べやすく加工されている安全なお餅を提供していたとのこと。
このような施設も多いと思います。
保育園でも未満児、以上児でわけ、餅つき大会はするけど未満児は食べられないということがありますよね。ここは仕方のないところです。
しかし、この性学もちは餅つき機でも作ることができ、誤嚥の危険性も少ないので、勤務時に知っていれば実際ついたお餅を提供できたかもと悔やまれるということ。
地域の郷土食を知り、現場に活かせたら素敵ですね☆彡
きっと高齢者の方々は郷土食には若い世代より馴染みがあり、懐かしくうれしく思われると思います♡私達栄養士・管理栄養士が伝統料理や郷土料理をもっと知り、現場に活かしていければさらに可能性が広がるなと感じました。
さいごに
WATAさんは、今回の件で郷土料理について勉強しながら太巻き寿司を作ってみると2歳の子供が喜んで食べてくれました!と、そして
まだ『郷土料理』を理解できない子供ですが、
普段の食卓の中に郷土料理を取り入れて、身近なものとして食べてもらうことが食育にも繋がるのかなと思った
と、おっしゃっていました。
夕飯のおかずに悩んだ時、まず郷土料理を選んでみてはいかがでしょうか。食事中の話のネタにもなりますし、おかずのレパートリーが一つでも増えたら嬉しいです♪
WATAさんは「春夏秋冬様々な食材は、生産者の方がいてこそ美味しく頂けます。日々感謝!」とおっしゃっていました。本当にこの気持ち大切ですね。
「いただきます」で始まり「ごちそうさま」で終わる食事、感謝の意味をしっかりと伝えていきたいとも感じました。WATAさん、千葉県の食の情報ありがとうございました!
参考文献
・服部一景(2014)『ちばのおかず-郷土の食材と料理-』河出書房新社
・千葉県ホームページ
・農林水産省Webサイト(大臣官房新事業・食品産業部外食・食文化課食文化室)